

お前の昔の資料って…めちゃくちゃやなぁ。

やっぱりそっか…。
自分にはデザインのセンスがないというかさ…。

…まぁそれもあるんやけど、大事なことを完全に見落としているプレゼン資料やねん。

そうかなぁ?
内容を端的にまとめるのに、結構時間かけた記憶がある資料なんだけど?

あぁ…その端的が問題なんよ。
『感情が失われるほどの端的』は、なるべく避けたほうがえぇで。

感情が失われる端的?
…全然意味が分かんないよ。

「結論から喋れ」みたいな感じで、普段は結論ベースで話を進めることって多いよな?

うん。
それが間違ってるってこと?

いや、それは別に悪いわけじゃない。
結論がなくだらだらしゃべる奴も評価は低いで。

うーんと…。
やっぱりよく分からないんだけど?

自分はよく山登りに例えるんやけど…。

山登り?

「山頂に到達する」っていう目標を達成するためには、実に様々なプロセスを経るわけよ。

プロセスねぇ…。

どんな経路で行くか、どんな装備をするか、どんな困難があったか、労力をどれだけ費やしたか…みたいなことや。

なるほど。
それが今回の話と何か関係があるの?

人によって、山頂への到達方法は千差万別やろ?

うん。
確かにそうだね。

今回の資料を見ていると山頂についたってことは分かるけど…。
そこに至るまで「どんな考えが費やされた」のか、「費やされた時間はどれぐらいだった」のか、「結論の根拠は選択しなかった選択肢」は…みたいなところ抜けてるやん?

うーん。まだよく分からないけど…。
確かにあんまりそういうのは書いてないと思うかな。内容を端的にするためにね。

それがよくないのよ。
山登りで言うと「もう選択しなかったルート」だったり、「持っていかなかった装備」だったり、「今回登るべきではないと判断された山々」だったりが自分には見えてるのか見えてないのか相手に伝わらんのよ。

それって…伝えなきゃいけないの?

人は「物語」で話を聞いてんねん。
その物語が見えへん話は、あんまりしっくりこうへんのよ。

へぇー。
そうなんだ。

例えば「一杯1,000円のラーメン」ってお前どう思う?

うーん…。
ちょっと高いかなぁ…みたいな。

でも、その店主さんのラーメンへの想いだったり、ラーメンを作るまでに費やされた時間だったり、こだわりつくされた材料だったり…。
っていう風な話を聞いた後やと、その1,000円って価値が少し変わってくると思わんか?

あぁ~実際そういうのあるかも。
ただ「1,000円」って言われるのと、テレビとかで生い立ちや想いを聞いた後だと価値観は変わるかもね。

そういうことや。
相手は『結論』だけ知りたいんちゃう。『物語』を知りたいのよ。

でもさ、そんなの全部話したり資料にしたら…。
めちゃくちゃ長くなるよ?

そこを必要なところに絞って構成していくのが大切なんよ。
だらだらとしゃべっていても伝わらんしな。

うーん…。
取捨選択は難しいなぁ…。

この考え方に正解はないで。「状況」や「対象」に応じて、当然変えていかなあかん部分も多い。
一方で「なんでも結論から話す」とか「端的にする」っていうのは全て正解ちゃう。そんな味気ないものが、人の心を打つと限らないんよ。

そっかぁ…。
結論ファーストの徹底は、ちょっと無機質過ぎたんだね。

同じ山を登るんやったら、そのプロセスは人それぞれでえぇと思うんよ。
一方で、そのプロセスを「自分はしっかりと道筋を立てて歩いてきたんだ」って相手に伝えてあげて欲しいのぉ。

そっかぁ。
わかったよ。

『説明とは文脈を伝えること』やねん。
ストーリーのない話に人はついてこうへんって思っとけばえぇ。
