

営業職へ向けてのセミナー?

そう。
最近、研修内容を変更していくって会社の方針があってね。

それで営業職へセミナーを?

そうなんだよね。
だけども、いきなり外部に高い費用を払うのは「どうなんだ」って意見もあってね…。

それでお前が何かしらテーマを見つけて、セミナーしろってなったってことか?

ま、まぁね…。
まぁ自分もTOMOから色々教わってるし、何か出来ないかなぁ~って思ったりもしてたし。

ほぅ。前向きやな。

後ろ向いててもどうしようもないしね。
参考までに何か新しい話を聞けると嬉しいな。

…以前に『プロスペクト理論』って教えたよな?

うん。あれでしょ?
人の心は−の方が揺れ動くってやつでしょ?

そうや。
急に1万円貰えるのと、急に1万円取られるのだと『+1万円』と『−1万円』の感情の揺れ動きは一緒のはずやのに、実際は『ー1万円』の方が明らかに感情に影響を与えるんや。

うん。それは覚えているよ。

ここから考えると、極端に言えば『仕事』には2種類しかないんよ。

2種類?

そうや。
「人に+を提供する仕事」と「人からーを取り除く仕事」ってことや。

「人に+を提供する仕事」と「人からーを取り除く仕事」かぁ。

このどちらかに該当している限り、それは仕事として成立するわけやな。
今回セミナーするっていう『営業』の人たちは、このどちらかに該当した動き方をせなあかん。

どういうこと?

営業職として何かを提案するんやろ?
その提案結果が「相手に今以上のメリットを与える」って説明なのか、「相手が今ネガティブに感じることを取り除く」って説明なのかをはっきりさせな。

「相手に今以上のメリットを与える」か「相手が今ネガティブに感じることを取り除く」かぁ…。

そのどちらかの効能があって、なおかつ相手がその提案に賛同して納得して初めて営業活動は成立すんねん。

なるほど…。

さらに言うと、プロスペクト理論的にはどっちの方が効果的やと思う?

えぇーと…。
プロスペクト理論的には−の方が心が大きく動くから…

そうや。
−に関する作用、つまりは「相手が今ネガティブに感じることを取り除く」って提案の方が通りやすいねん。

そうなんだ。ちょっと意外かも。

意外?

うん。
なんか提案ってポジティブなイメージがあったからさ。

まぁそうかもな。
ただ、論理的にはネガティブを取り除く提案の方が相手は聞いてくれることが多いんやで。

そっか。
じゃあ「相手が困っていること」がいち早く分かると良いのかもね。

そういうことや。
普段から営業職は、相手の困りごとに敏感にならなあかんのよ。

この内容を営業職に話すと喜ばれるかな?
ありがとう。

待て待て。
もう一つ大事なことがあるで。

え?何?

「何かをポジティブに達成したい」よりも「何かを回避したい」っていう感情への提案は、確かに間違っていないで。

うん。

ただな、それって『現状維持』って意味なんよ。

現状維持?

せやろ?
仮に今の自分の状態が0やとして、ー10になるのが嫌で費用を払ってー10を回避したとしよか?

うん。

そしたら、結末は『0』やろ?

…確かに。
でもそれがどうしたの?

人はな「現状維持にかかるコストを無視しがち」やねん。
+になるものにお金払うのはええけど、-を無くすものはなるべくタダにしたいねん。

えー!そんなぁ…。

お前にも思い当たる節、有るやろ?

うーん…。

病院代払いたいか?

いやぁ、それは…。

有料ごみ袋、喜んで金払うか?

うーん…。

調子の悪いスマホの修理、なんぼでも払うか?

わ、わかったよ。確かにそうだね。
すべて解決しても、0って『通常』にしかならないもんね。

そういうことや。
だから「相手が今ネガティブに感じることを取り除く」って視点は大事やけど「現状維持にかかるコストを払いたくない」って感情もあることは意識してな。

そっかぁ…。
払いたくない人には、どうしたら気持ち動いてもらえるのかなぁ?

いったん『ー』を経験させるとえぇな。

経験?

そうや。人はネガティブに敏感やから、一度ネガティブを経験するとそれを避けたくてたまらんのよ。
つまりは先手を打ってネガティブを避けられる提案をしておいて、それでも反応が微妙やったら一度『ー』を経験させるとそのあとが全然違うわ。

なるほどね。
経験しないと『ー』は実感してもらえないのか…。

現状維持ってタダで出来ることももちろんあるけど、費用が掛かることも沢山あるのよ。
それを分かってもらわないとな。

うーん。
奥が深いねぇ…。
