

ねえねえ…。
上司が「ウソ」をつくらしいんだけどさ…。

ウソ?

うん…。若手社員と話をしていると…。
「ちょっと困ってるんです」みたいな話なのよね。

上司はそんなに「ウソ」ついてるんか?

いやでもそんな感じもしてなくて…。
なんかまた『認識の違い』的なことが起きてるんじゃないかなぁ?と思うんだけどさ。

どんな話やねん?

うーん。ざっくり言うと…。
「事前に言われたこと」があって、その通りにしてたら何だか「怒られた」みたいな話。

あー。
何となくやけど、見えてきたわ。

へぇ…。
そんな簡単にわかるものなの?

あぁ。
「ウソ」にも2種類あんねん。

2種類?

そうや。
『真っ赤なウソ』と『真っ白なウソ』や。

それは…どう違うの?

そうやな…。
『真っ赤なウソ』は相手を騙したり傷つけたりする意図的なウソであって、『真っ白なウソ』は逆に自分が傷つかないためにつくウソ…みたいな感じかのぉ?

今回の話だと…。
上司のウソは『真っ白なウソ』になるってこと?

おっ!ものわかりええやん。

そうかな?ありがとう。

大体こんなとこやと思うねんけど…。
上司から「何でも相談してくれ」みたいに言われて、若手が真に受けて『何でも』聞きに行ったら「そんなん自分で考えろ!」みたいな話ちゃうかの?

あー。本当にまさにそんな感じ。

せやろ?
そういうことは現実的にはよう起きんねん。

でもそれって上司が「何でも聞いていいよ」って言って、聞きにきてる部下に怒るんでしょ?
だから…ちょっと間違ってない?

それがな…。
実は間違ってへんねん。

え?どういうこと?

そこにはな、『文脈』がないねん。

文脈?

そうや。
おそらく上司の頭の中には「何でも聞きに来てくれ」の前に()が付いてて、『ある程度自分で調べたり、やってみてどうしてもわからないことがあったら』みたいな文章が隠れてんねん。

えぇ!そんなの…面倒くさいよ。

「面倒くさい」言うても…日本人ってそういうところあるからな。
「あえて言わん」だったり、「察しろ」みたいなところ。

あー、それはまぁ日本人特有というか…。
「社交辞令」とかもそういう意味ではあるよね?

せやろ?
「また遊びましょう」とか、「今度○○しましょうね」みたいなんと一緒や。
その言葉の文脈を読めへんとあかんやろ?若手社員はいい意味でも悪い意味でも素直やから、今回みたいなことが起こるちゅうことやな。

別のケースだと…。
「何でもでもどんどんやってみろ」みたいに言われて、自分から色々やってたら「なんで勝手な事するんだ!」みたいなことを言われた若手もいるみたい。

それもまさに『真っ白なウソ』やな。
人を傷つけるためのウソやないねん。

『自分を守るため』って言ってたもんね。

そうや。
『あえて言わない』っていうのは自分を守るためや。責任逃れ…でもあるねんけどな。
それが世の中をややこしくしているんやけどな…。

なんか…本音が見えなくてしんどいね。

まぁな。こういうのが続くと人は疑心暗鬼になりがちや。
ま、面接なんてそんなもんやろ?「あえて言わない」人の矛盾をいかに見抜くかやろ?

まぁ確かに…。
「あえて言わない」人の話って、途中で文脈が破綻してることも多いからね。

んで、逆に「世の中が本音だけ」になってもしんどいやろ?
上司の発言にイライラしたら「ムカついています!」って瞬時に口から出る世界が平和か?

そ、それはちょっと…笑

その辺の『文脈を読む練習』っていうのは、ある程度若手社員には必要になってくると思うわ。
これは現代社会で生きて行く中では、必要なスキルやからなぁ。

そうかぁ…。
この辺は、多少慣れてもらう必要があるのかぁ。

こういう形で正解や本音が何種類かある状態っていうのを『ダブルバインド』って言うねん。
まぁ…ちょっと頭の中に入れといてくれや。

『ダブルバインド』ね。

「何でも聞いて」っていうのと、「何でもは聞いたらアカン」っていう答えが2つ以上あるような状況のことや。

うん、わかったよ。
若手社員には…なんとかうまいこと伝えて少し慣れてもらうようにするよ。

まぁそんなとこやな。
…こればっかりは、世の中きっとすぐには直らへんわ。
