

ねぇ?
『良い商品』ってさ、売れるよね?

…なんや?急に。

いや、営業マンがさ「うちの商品はあんまり良い商品じゃない」的なことを言っているのを聞いたもんで…。

うーん…。
そうなるとなかなか末期やな…。

末期?
そうなの?

売れない理由を商品のせいにすれば、簡単やからな。

まぁ…確かにそうだね。
でも、実際に「良い商品じゃないから売れない」ってことはあるんじゃない?

まぁそれもそうやけど…。
んで、最初の質問はどういう意味やねん?

いや、純粋に仮にうちの商品がめちゃくちゃいい商品だったら…。
実際には「売れる」んだろうなって。

うーん…。そういう訳ちゃうわ。
『良い商品であっても売れない』って事は多々あるわ。

えー?そうなの?

お前も昔営業マンやってたんだから、分かるやろ?

分かるような、分からないような…。

これは対象の商品が例え『万人に勧めたい様な商品』であっても同じようなことが起こるな。

…売れないってこと?

そうや。
営業職は『売り手目線』っていう病気によくかかるねん。

えぇーっと…。
売り手目線?

そうや。
これにはぼちぼち注意が必要なんよ。

どういうこと…?
相手が欲しくなくて、自分が売りたい商品を売る…ってこと?

それは…論外や。

まぁ…そうだよね。

相手に商品やサービスが例え有益であっても、売れるとは限らんってことやねん。

…そうなの?
相手にメリットを提示してるんだから、全然アリな話じゃないの?

以前にも教えたやろ?
人間の感情はプラスとマイナスやと…。

あぁ。マイナスに心が動きがちってことでしょ?

そうや。
大事なことは、あくまで『商品を購入するかどうかを決めるのは顧客』ってことやねん。

主語は『顧客』ってことね。

そうやで。
そして『良い商品かどうかを決めるのも顧客』なんよ。

うーん…。そうかぁ。

たとえ数年前のスマホであっても、使っている本人が何とも思っていなければ買い替える必要はないやろ?
お前がどんなに性能が優れて安価なスマホを提供できたとしてもな。

まぁ、そうだね。

担当の営業が親切で頼りがいがあっても、それが商品を買う理由にはならないことだってある。

確かに、確かに。

だから『一つの幻想』から抜け出さなあかんのよ。

…一つの幻想?

商品が良かったり、提案が良かったりしたとしても『相手が買うとは限らないっていう世界』に我々はいるってことを、なぜか人は忘れがちなんよ。

うーん…。

じゃあ『世界最高の生地を使ったTシャツ』があったとしよか?

うん。

「最高の生地」に「最高のデザイナー」「最高の縫製」と完璧や。
…だからと言って、必ずしも誰もが買うとはならんのよ。最高の製品やで?

まぁ…確かにそうだね。
自分も買うとは限らないだろうし…。

繰り返しになるんやけど、「買うかどうかを決めるきっかけ」は顧客が持ってんねん。そしてそれは人それぞれであるものなんよ。
さらに言うと、人には『買わない』っていう選択肢も常に存在しているっていうことを忘れてはあかんわな。

買わないかぁ…。

なぜか営業マンはそれを忘れてしまうことが多いんよな。
「提案が素晴らしければ商品が良ければ売れる?」
ちゃうで。相手の選択肢には「買わない」とか「一旦考える」とかっていうものも含まれてることを、ちゃんと意識して欲しいわな。

そっかぁ。
じゃあ「商品の良し悪し」とかを言っている営業は、実際まだまだなのかもね…。

せやな。相手が必要やと思えば、こちらに自信ない製品でも売れることはあるからな。
まぁそういうのが分からないからこそ面白いし、勉強のしがいがある所やと思うんやけど。
