自分の中で人との交渉は、それなりの経験と実績を持っている…と感じてはいます。一方でこの本の中で紹介されている手法は、自分でも難しいと感じていることが多いのは事実です。実際に取り入れようとすると、ぎこちない対応になることがほとんどです。
ただ、人間の本質に言及して分析している内容なので、実際に使えるようになると交渉のスキルの改善を見込めるかと思います。
1 ミラーリング
言葉の通り、相手の言葉をそのまま言い返すオウム返しが基本です。毎回同じ言葉だと相手に不快感を与える恐れがあるので、類似する言葉に変換して使用することがほとんどかと思います。
本質は相手への「共感」や「信頼感」の醸成がメインであり、相手の「話をしっかりと聴いてもらっている」という印象が交渉の可否を左右します。ミラーリングは「沈黙」と相性が良く、ミラーリングをした後に口をつぐむことで相手に自己整理する時間を与えることが出来ます。
沈黙は嫌う人も多いかもしれませんが、沈黙を楽しめるようになると交渉のスキルが上がる時間に繋がるかと思います。聴くことに徹して、大事な話ほど時間を掛ける意識で交渉に望みましょう。
2 ラベリング
相手の感情に名前を付けて、感情の理解を示すことが「ラベリング」になります。特にネガティブな感情を発散させることによって、合意形成を妨げる恐れのある「モヤモヤ」を解消できます。発散することが大事であり、具体的な解決にならなくてもあまり問題ではありません。
相手の半歩先を読んだ感情の言語化は、そもそも相手の話や動作に注目しなければ出来ません。「~のように聞こえますね」と断定せずに伝えることで、余計な軋轢を生まない様に注意しましょう。
結局は「話を聴く」ということは、様々な交渉術の礎になっているということです。
3 非難の聴取
自分への否定的感情を開示し、セルフハンディキャップを背負うことが交渉をスムーズにします。Noを引き出す一つとしても効果を発揮し、極端なラベリングとも言えるでしょう。
Noは安心と相手への主導権の回復を意味しますので、この状態を意識的に作ることで相手の心地よさを醸し出すことが出来ます。主導権を握っていると感じる「コントロール欲求」は人間が本能的に欲している欲求です。
相手に「違う」と言わせて「申し訳ありません」と答える目的は「謝罪」ではなく、関係の構築という視点が大切です。この点は日本人の気質ともよく合っているのではないかと思います。
4 狙いを定めた質問
主導権を握っていると感じさせることで有効なのが、この「狙いを定めた質問」になります。要求ではなく「問い」をベースに交渉を進め、相手が自ら考えて選びながら動いているという「錯覚」を作り上げることが出来ます。
「申し訳ありませんが、どうしたら…」と伝えることで、Noと言わないNoを示すことが出来ます。そして主導権を相手に渡す(と見せかける)ことで、相手からの反発も抑えることが出来ます。
問題解決のエネルギーを、相手に預けましょう。最初はうまくいかないかもしれませんが、この質問を繰り返すことで自分の期待値に近づけることが可能です。
5 要約
相手の思考と内面を引き出して正確に言い換え、内面からの同意を得るための行為です。話を「聴く」ことで出来上がる集大成と言えます。相手の立場、意図、背景、感情をどこまで考慮できるかがポイントです。
「私が今理解しているのは…」から始め、一部の正解を早めに見つけ出すことが望ましいでしょう。「その通りだ」は完璧な合意であるため、間違えた解釈では決して達することが出来ません。
ミラーリング、ラベリング、各種質問の総仕上げとしての立ち位置が「要約」です。
「あなたの言う通りだ」では意味がなく、「その通りだ」を引き出せるかどうかがカギとも言えます。とりあえずのYesと同等の「あなたの言うとおりだ」には、大きな意味がありません。
6 公正さ
交渉でうまくいかない要因の一つが「不公平感」と言われています。これは論理の説明というよりかは「感情」に起因していることが大きいです。
相手に強烈なNoを突きつけるとして、この「公正さ」は大きな威力を発揮します。ただそれは諸刃の剣であることも表しています。
誠実さを背景にして早めに主導権を握るのであれば、この「公正さ」を提示していくことは一つの有効な手段です。「フェアにいきましょう」という発言は、フェアではないと感じていなければ出てこない情報です。
誠実さを背景にするのであれば、金額や期限の取り扱いについても注意を払う必要があります。ざっくりとした期限や金額よりも、具体的な金額や期限の方が明確に取り扱われがちです。提示が具体的であればあるほど、意味は別にして取り扱いを重視してもらえることが多いです。
…自分は堅苦しくて、あまり好きではないですが。
7 値切り交渉
交渉ごとの本質が出やすいのが、この「値切り交渉」ではないかと感じています。1回ですべてを終わらせるのではなく、ある程度交渉の幅を想定できるかが大事です。やり取りの目安は3回程度を想定するのが、適当かと思います。
苦しいことやイヤなことを早く終わらせたい気持ちは理解できますが、交渉のためには相手からの非難を関係構築への投資と捉えるくらいの気概が必要です。相手の型に合わせて、ゴールへのプロセスを構築しましょう。
簡単にまとめると
・主張型
好み:手短、主導権
嫌い:話が長い、分かりにくい説明
時間:短く済ませたい
沈黙:イライラのサイン
対応
・狙いを定めた質問:相手の指示権を尊重しつつ、選択肢を相手に出させる
→「どうすれば御社の方針に沿えますか?」
・非難の聴取:主導権を奪わず、下から入ることでバランスを取る
→「少し強引に聞こえたかもしれません」
・要約で主導権を返す:相手の言いたいことを“先回りして”言い切る
→「つまり◯◯という点がネックですよね?」
・順応型
好み:関係性
嫌い:無関心
時間:関係構築を重視
沈黙:不安を生じさせる
対応
・ラベリング:相手の感情や気配りを言語化
→「お気遣いありがとうございます、でも少し無理されてませんか?」
・ミラーリング:会話の“余白”を活かして共感を引き出す
→「それは…大変でした?」
・ 非難の聴取:セルフハンディキャップを多用
→「こんなことを言ったら気を悪くされますよね…」と先に言うと、逆に信頼へ
・分析型
好み:情報、正確性
嫌い:感情論、時間の圧力
時間:じっくり考える
沈黙:思考中
対応
・狙いを定めた質問(論理型):構造を、一緒に組み立てる姿勢を示す
→「どう整理すれば矛盾なく合意に至りますか?」
・公正さの活用(条件整理) :共同の設計
→「この条件は双方にとって公平でしょうか?」
・沈黙を尊重:沈黙後に「今、どこを再整理されていますか?」とフォロー
といったイメージでしょうか。
8 ブラックスワン
見えない論理は、見ようと思っても見えません。当たり前ですが、合理的には判断できないポイントがどこかに眠っている可能性があります。
まずはその可能性を想像することが大切ですが、相手のブラックスワンが見えてない中での行動は一見チグハグにみえることがほとんどです。その場合には「未発見の事情があるかもしれない」という前提で、違和感を放置しないようにしましょう。
会相手の譲れない前提や、隠された論理によって突然の破綻があることを肝に銘じておく必要があります。「社内のゴタゴタ」「相手の正義」「上司の意向」といった見えない要因も、経験を通して視座を高めていく必要があります。
内容は多岐に渡りますが、抜粋しつつ要約をしました。よろしければ、ぜひ本書をお読みください。


