

いやぁ…
参ったよ。

どないした?

会社で「全面禁煙」みたいな話になってさ。

…お前タバコ吸うたっけ?

いや、僕は吸わないんだけど。

なら別にえぇやん。

「吸う派」からすると、抵抗があるよね?

まぁ、そうやな。

禁煙を推し進めるにあたって…。
ごくごく当たり前の、いろんなデータなりは提示したんだけど…。

「あんまり効果がない」って話か?

まぁそんなところ。

それには名前がついてるんだけど、知っとるか?

え?禁煙の方針に?

「禁煙」に限った話やないんやけどな。

どんな名前?

『認知的不協和』っていうねん。

…なんか難しい漢字だらけだね。

一言で言うと…。
『矛盾で苦しんでいる状態』っていうことやな。

矛盾?

そうや。
「どちらかを選びたいんやけど、どちらかしか選べなくてどちらかを諦めなきゃいけない状態」ってことやね。

うーん…。
ずいぶん難しいね。

さっきのタバコの件やと…。
「タバコを吸うことによるメリット」と、「タバコを吸わないことによるメリット」は同時には得られんよな?

そうだね。

今回は会社内での「禁煙」は、片方のメリットを押し付けるカタチになっとるな?

まぁ、カタチ上はそうかな?

このどちらかを選ぶと、どちらかを諦めなきゃいけない状況において…。
人はどちらかの状態が不合理であると解釈をして、このモヤモヤを解消しようとするねん。

うーん…。
今日の話は難しいなぁ。

まぁ簡単に言うと「タバコを吸うメリットを選ぶ」んやとしたら、「タバコを吸わないメリットを否定」すんのよ。

…「我慢してる方が健康に悪い」とか?

そんな感じや。
実際、そういう声が出てるんやろ?

そうだね。

まぁ、この理由付けっていうのが正しいかどうかじゃなくて…。
『自分自身を納得させられるかどうか』っていう風なところに、主眼が置かれていることが多いんやけどな。

あ、そうなんだ。

タバコ以外にも例えば…。
「ダイエット」とか「飲み会」とかそういうのも認知的不協和になりやすいな。

ダイエットかぁ…。
あ!「ダイエット中なのに、甘いものを食べるかどうかって悩む」みたいなこと?

そういうことや。

「食べるメリット」と「食べないメリット」を並べて、どちらかを否定するわけね。

ずいぶんと物分かりがえぇやん。

これも「我慢した方が体に悪い」みたいな話が多そうだね。

そうやな。
だいたい自分を甘やかしたり、自分に都合のいい解釈をすることが多いからな。

なるほどね。

少し応用させると…。
『人はやらない理由を考える方が才能がある』ってことやねん。

そうなんだ。

「あの人は気難しい」とか、「あの会社はなかなか上手く話し通らん」とか…。
そういう噂が出ているところって、過去に認知的不協和によって非合理的に解釈されとる場合が結構あるねん。

ふむふむ。

だから、意外と話進めてみたら「噂通りじゃなかった…」ってことも結構あんのよ。

へぇ、そうなんだ。

人は『自分に都合のよく合理性を否定』したり、『不合理を肯定』したりする生き物なんや。
やらない理由を作る天才やねん。なにせやる理由が10コあっても、やらない理由が1つでもあれば、やらん奴が圧倒的に多いからな。

なんか…認めたくないけど、分かる気がするよ。

まとめると、『認知的不協和っていう状態を解消するのに、人は自分なりに都合良くする』っていうことやな。

OK。
よくわかったよ。

どうするか困ったら「やりたくない方」を選んだ方が、『認知的不協和のバイアス』がかかってないから正しかったりすることが多いってことを、頭の片隅に入れてほしいのぉ。

…うん、わかったよ。
