著者の 北野唯我 氏の作品は、数冊拝見しています。思考の整理の好みが私と似ている部分が多く、とても共感することが出来ます。今回の作品も、過去の作品と変わらず完成度が高いと感じました。
私の人事としての立場では、やはり「採用」に関して刺さる内容が多いです。ただ、それ以外にも共感を得る部分も多い作品でしたので、その一部をご紹介します。
▼ 問題と解決の考え方
「問題がシンプル」→「解決は詳細に」、「問題が複雑」→「解決はシンプルに」
という言葉が、とても印象に残りました。「あぁ、なるほどな」とこの一言に凝縮があった印象です。「問題がシンプル」→「解決はシンプル」、「問題が複雑」→「解決は複雑」という一般概念を勝手に持っていたと感じます。
確かに取り組みやすそうな課題が意外に仕上がらないことや、逆に難しそうなテーマへの取り組みや着地があっけないことってよくあるんですよね。心構えにもよるのかもしれませんが、特に難しそうに見える問題への取り組みの一歩目への難易度が変わるかもしれません。
複雑そうな課題こそ、回答をシンプルにすることを心掛けたいと思います。
▼ 迷ったら合理的じゃない方を選べ
これも、非常にしっくりきます。そもそも合理的であるならば、選択肢には迷わない(より合理的な方を選択するのが筋)のは確かに当然であるからです。迷うのは合理を超えた何かがあるためで、本当にやりたいという合理を超えた「感情」のせいかもしれません。
そうならば、確かに不合理な方を選ぶのは「合理的」なのかもしれませんね。合理を超えた魅力があるからこその悩みに、自分の今後を賭けてみるのも一興です。
ただ、そこまで悩んだ選択肢については再考の必要性もあるのでは…?という印象を持たないこともありません。選択肢を決めた時点で、ある程度自分の気持ちは決まっていることは多いのではないかとも思います…。決めきれない選択肢であったならば、そもそも別の可能性を模索する必要も残るかと思います。
▼ バイヤーズ・イン思考
「マーケットイン」と「プロダクトアウト」の是非について(もちろん優劣は場合による)考える中で、新たな選択肢を提示してもらいました。感覚的には、マーケットインをより具体的にしたものというイメージです。
そもそも「プロダクトアウト」は市場ニーズをとらえることが難しく、定義も曖昧という課題を抱えています。そのため多くの企業は「マーケットイン」にて製品を製造することが多いですが、実態として競争等によって疲弊しているのが事実です。
その中で「バイヤーズイン」は消費者にまで目線を絞って、どういう人ならお金を払ってくれるか?をを考えた製品やサービスの提供を行う考え方です。クラウドファンディングがイメージに近しく、そもそも「作ってから売る」のではなく「売れるからつくる」ところまで先に仕上げてしまう感覚が私には新鮮でした。
さらに踏み込むと「財布と時計」、つまりは時間とお金を他のシェアから奪えるかどうかという視点も新たな学びとなりました。ランチに1,000円の定食を提供するのであれば、消費者の昼休みと1,000円をどこかの選択肢から奪ってくるわけです。そこまで具体化して考えなければ、サービスとして成立しないところまで来ているのですね…。
受注生産のメリットを強く感じると共に、消費者のニーズを細部まで想像する必要性を深く感じさせられた次第です。
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本の中には採用をテーマにしていて、実際の採用に活かせそうな内容も多々入っていました。内容を抜粋しつつ、自社の採用に活かすには…?という視点でまとめてみました。
▼ 選考のポイント
先に自社の選考ポイントを、どこかのタイミングで開示するのは私はアリだと思っています。基本的にはそんなことはされないと思いますが、そもそも価値観の違う人の選考は、時間の浪費かと考えます。
「こんな人に来てほしい」というメッセージを、早いうちに伝えることはそんなに変なことかなぁ?と、思ったりします。
【選考のポイント】 最優先は7です
- 戦略性:何かの達成を「努力」ではなく「工夫」によって実現したカコがあるか?
- 達成思考:困難な目標に向かって成果を出し切った経験があるか?
- 変革思考:既存のルールや慣習を変えたことがあるか?
- 好奇心:普段から関心の有る分野と、その期間はどういったモノか?
- 洞察力:仮説をもって普段から行動しているか?
- 胆力:苦しい状況で逃げずに立ち向かった過去があるか?
- 自己意識:自分の意志で、意志決定しているか?
人生は他者から与えられるコミュニティ(家族や小学校)から自分で選んだコミュニティ(大学や会社)へと変わっていく事実があり、その中で企業選択が「自分の意志」であるかどうかを選考基準に置きたいと考えています。
ですので、1~7のうち最優先は7と考えたいですね。
▼ 具体性と抽象性
言葉は少し難しく感じる人もいるかもしれませんが、結局「うちの会社に来て幸せか?」を採用としては見たいとどうしても思います。そうなると抽象的な幸せの「状態」がどんなものであるか、そしてその状態を達成する具体的な「行動」がどのようなモノであるかを自分の言葉にしてもらいたいと感じます。
幸せの状態は様々であり、日常的に友人や仲間とともにいる充実感を幸せと感じる人もいれば、その逆で1人を好む人もいるでしょう。その状態を目指すための日々の具体的な行動は、さらに千差万別です。
本人の抽象的な幸せが他者との関わりが主体なのに、リモートワークの職場は果たして最適でしょう…か?給与や福利厚生だけでは測れないポイントを、この点から掴みたいと考えます。
▼ 好きの具合
結局「この仕事が好き!」の人を採用することが、一番うまくいくという肌感覚を持っています。「努力は夢中に勝てない」という感性が、確かに私にはあります。その中でより解像度の高い言葉が「生産者としての好き」かどうかを問うという、本書の言葉です。
確かに美味しい食事はみんな好きかもしれませんが、その消費者ではなく生産者として好きな人の方が深度がある様に感じます。「自社製品を愛情を持って製作できる人」を、自分としても選考したいと改めて感じましたね。
▼ 成長とは「変化率」である
会社のスタンスとして現時点での能力(学力や職歴)を最重視しないという姿勢は、従来より持っています。より具体化してくれた言葉が、まさにこの言葉です。
確かに期待しているのはその時点での「絶対値」ではなく、その後の「変化率」であることはその通りだと思います。入社時の期待値がピークでは、どうしようもありません。
入社後の可能性を最優先しているからこそ、メッセージとしては「現時点」ではなく「未来」を強く発信する必要があると感じます。極端な話、1次試験より最終試験の印象が良い人の方が評価されるぐらいのイメージかもしれません。
▼ 期待値シート
候補者に期待してばかりで、会社としての準備も怠ってはいけません。その中でも具体的に行動に起こしたいと感じた内容が、この期待値シートです
- 長期:会社に期待する人物像の言語化
- 短期:1年後にどんなイメージか?
- 超短期:入社して先ずは何を頑張ればいいか?
の様なカタチで、会社側の期待値と本人の目指す方向性を早目に示すことが改めて大事だと思いました。
本来としては社員本人にしてもらうべき…?と思っていましたが、昨今の採用状況を加味するとここまではコチラから提示する必要性を強く感じます。良いか、悪いかは別として。
OJTとして充てる人を目標と出来ればさらに理想的ですが、そこまで約束は難しいと感じたことも正直なところです。新人の納得感を早いうちで掴み、能動的に行動してほしいという想いを込めています。
▼ まとめ
ここまでを簡単にまとめると…
- 能動的な人が欲しいよ
- さらに言うと自分の言葉でしっかり説明出来て
- 根本的にモノ作りが好きな人だよ
それに対して企業の姿勢としては
- 幅広い人材を求めているよ
- イマの実力より、将来の伸びしろだよ
- 入社したら具体的な育成のイメージも伝えるよ
といった内容になるかなと、思います。
私の理想としては企業説明をせず(自分でその辺はしっかりしてもらいたい)にエントリーしてくれると嬉しいですね。企業の人事担当として、付加価値を生み出せたような実感を持てる…気がします。
その他にも内容は盛りだくさんで、人事担当以外でも十分読み応えのある本です。よろしければぜひ。

